多汗症や、手のひらの汗の軽減のお悩みのご相談なら渋谷にある山本英博クリニック

治療法についてTREATMENT

治療についてTREATMENT

手のひらの多汗症の治療では、外用薬(塩化アルミニウムの塗り薬)・手のひらへの通電療法(イオントフォレーシス)・
内視鏡手術(胸腔鏡下胸部交感神経節切除術、以下ETSと略す)の3つの方法があります。
多汗症の重症度によって治療方法を選択する必要があります。それぞれ、治療成績が異なります。

手術以外の治療方法

外用薬(塩化アルミニウムの塗布)

外用薬は塩化アルミニウムを主成分とする薬液ですが、医師の処方箋がなくても一般の薬局で購入が可能です。

  • 塩化アルミニウム(新城薬局)
  • オドレミン液(日邦薬品工業株式会社,市価1000円)
  • テノール液(サトウ製薬)

など、販売されています。
塩化アルミニウムはそれ自体、飲料としても存在し人体に無害な物質です。
この外用薬を、発汗していないタイミングで手のひらに塗って処置することによって、多汗が改善できる場合があります。汗が出ている状態で外用薬を用いている場合は、効果が少なくなります。

外用薬(塩化アルミニウムの塗布)
イオン導入法(器具としてドライオニックが有名)

外用薬では効果がない場合には、イオントフォレーシス治療によって効果が得られる場合があります。皮膚における汗の出口である汗孔に対し電気的に炎症をあたえます。この炎症により汗の出口である汗孔を閉塞させて汗を減らせます。 一回のイオントフォレーシスに15分から30分程度を要し、一週間に2ないし3回程度繰り返し行なう必要があります。

機器の購入を斡旋するものではありません。機器の購入は自己責任で行ってください。

イオン導入法

手術以外の治療をお考えの方へ

外用薬・イオントフォレーシスは医師への受診がなくても行なえますが、適切な治療を受けるためには医師に受診する必要があります。
受診する場合にはETSを行っている多汗症に十分詳しい医師が望ましいですが、それが無理な場合には皮膚科への受診が相応しいと思われます。

手術治療について

ETSとは

手のひら・わきの下・顔・頭部の多汗症の手術治療は、胸腔鏡下胸部交感神経節切除術Endoscopic thoracic sympathetomy (ETS) として1996年4月から保険適応になっております。

ETSは皮膚科で行われている手術ではなく胸部外科・呼吸器外科で行われておりますので、手術治療が必要な場合は皮膚科医から紹介されるのが一般的です。しかしながら、多汗症は胸部外科・呼吸器外科でも習熟度が低いこともあり、可能な限り多汗症に十分詳しい医師に相談することをお勧めします。
多汗症の治療は1930年代より行われており、以上の如く様々な方法が試みられてきました。ETS以外には、頚部交感神経ブロック、局所へのボツリヌス毒素注射、クリップ手術などが行われた経緯があります。
それぞれに問題点を残したため、現在ではあまり行なわれなくなりました。

ETSは、手のひらの多汗症には確実な効果があり、特効的ともいえる治療法です。外用薬・イオントフォレーシスに効果が見られない重症例でも、十分な効果が得られます。

手のひらの汗・顔面・頭部・脇の下・足の裏からの汗は、自律神経の一つである交感神経の活動によって誘導されます。 発汗の中心的な役割をはたす交感神経節の機能も解明されてきており、顔面・頭部の汗は頚部から第三肋骨までの交感神経節が関係しており、手のひらでは頚部から第六肋骨まで、脇の下では第三から第八肋骨まで、足の裏では腰部交感神経節と、それぞれ関連する神経節の領域が異なっています。

このため、多汗症治療において交感神経節に直接アプローチし、発汗にかかわる交感神経節の働きを抑える処置を行なうのがETSです。

一方、交感神経節は発汗だけの役割を果たしているのではなく、他の機能もあります。そのため、ETSでは手術部位の選択が重要となり、手技に関しても正確かつ繊細な操作が要求されることになります。 切除部位が不適切な場合には、瞼が垂れ下がる「ホルネル症候群」と呼ばれる副作用がでます。 現在では、映像技術がハイテク化し小型高性能な内視鏡が開発された結果、細くて小さな交感神経線維であっても拡大して見ることができるようになり、手術の精度・確実度は格段に向上しました。 他の内視鏡手術と同様ですが、多汗症手術においても治療件数が増加しています。

ETSでは手術後に顔面・頭部手のひら・脇の下の発汗は止まる一方、それ以外の部位の発汗は増加する反射性発汗(別名:代償性発汗)とよばれる状態があります。 反射性発汗も程度が強い場合には日常生活で負担となりETSの問題点とされてきました。 歴史的には、ETSは北欧において開発され、当初は全身の発汗能力の高くない白人に適応されたため、反射性発汗はあまり問題となりませんでした。 しかし、ETSが1990年代より世界中で行われるようになり、有色人種における反射性発汗がクローズアップされるようになりました。 この副作用の原因では、交感神経節の手術部位が大きく関係していることが明らかとなり、改善が図られています。

当院のETSの特徴

当院は豊富な治療経験に基づく確かな技術力で最適な治療を提供いたします。

12018/5/31まで12600件のETS手術経験があります。

平成8年4月より単独の術者としてこれまで12600例超の経験をしております。

2LSFG技術を用い、代償性発汗の解消

当院は、代償性発汗の治療に成功しております。
副作用である代償性発汗の対策方法を盛り込み、手術治療を行っています。
LSFG技術については多汗症教室で説明しております。
この技術は、胸部外科英文論文(Journal of thoracic cardiovascular surgery)に掲載されています。

3日帰り手術を行っております。

  • 日帰り手術の実施 手術・麻酔事故(出血・肺損傷・術後気胸など)は一切なく、安全な日帰り手術を行っております。

  • 全身麻酔 ETSは全身麻酔・分離肺換気で行われます。
    当院の麻酔は経験豊富な麻酔指導医が担当します。
    麻酔指導医が担当する理由は、術中の特別な事象(肺の癒着・解剖学的変異や奇形・出血・他病変)に対処し、万全の安全性を確保するためです。ETSの日帰り手術を行っている他施設の中には麻酔医をおかず、自家麻酔(執刀医が麻酔も管理する)で行っている施設もありますが不適切と考えています。手術時間は、奇形や解剖学的変異・胸膜肺癒着などがなければ、約25分で手術は終了します。

4皮膚切開は2.5ミリ一ヵ所のみ、手術瘢痕は術後ほとんど消失します。

腋窩に2.5㍉の皮膚切開を一カ所行うだけで、ETSが可能です。
傷跡は残らず、疼痛も軽減されます。
創部が消失するため、ほかの人に知られることがなく、精神面でのメリットがあります。

  • 美容上の問題を克服 傷のあとがケロイド状態になる場合がありましたが、本術式では著名に改善しました。(手術痕が3カ月後の時点で見えなくなったと回答した人は99.8%でした。)ETSにおいて発汗が止まることが一番大事なことと考えていますが、美容上のメリットもこれに劣らず重要だと考えております。

  • 痛みの問題 器具が細小であり、神経損傷の可能性が極めて少ないうえに、傷が1カ所だけであるため創部痛は少なくてすみます。

  • 当院オリジナルの器具を使用 当院と同じStorz社製の2mmの胸腔鏡を使っている施設は他にもありますが、他施設と異なる点は、小生が考案しライセンスを所有している器具(NTS scope guide)は外径が2.45mmであり皮膚切開が2-2.5mmの1カ所で手術が完結できる点です。
    他施設で2mmのトロカールを用いて小生と同等の手術と放言している施設があるようですが、その場合の2mmのトロカールというのは外径3.4mmもあり、小生のNTS scope guideの約1.5倍のものです。この場合、皮膚切開を2mmで行えば裂傷が生じ術後にケロイドや手術瘢痕が発生しやすくなります。
    また皮膚切開が何カ所であるかを確認する必要が有ります。
    胸壁に2カ所と表現している施設がありますが、この場合片側の手術で2カ所なのか両側の手術で2カ所なのかを確かめておく必要があります。当院のNTS scope guideでは片側の手術で1カ所、両側の手術で2カ所であり実際に傷は99.8%の人で完全に消失します。他院の外径3.4mmのトロカールでは傷跡が残ります。

5ホルネル症候群の発生事例はありません。

切除部位が不適切な場合(T1レベル)には、瞼が垂れ下がるホルネル症候群と呼ばれる副作用がでます。
当クリニックでは、術中レントゲンの撮影により、交感神経の切除レベルを確認することで切除部位の誤認を回避しております。
これまで第一肋骨の切除をしてホルネル症候群の発生事例はありません。
ホルネル症候群に対しては、手掌多汗症の治療では文献上1000分の2の危険率が報告されています。

6脇の多汗症も改善します。

脇の多汗症(腋臭症)に関しても、術中LSFG技術により、手の汗のみならず、脇の多汗の治療成績を約50%(他院一般的)から80%(当院)にまで向上できました。
手の多汗と脇の多汗の治療を一度で望む人に適します。
美容外科等で剪徐手術を受け、効果がなかった患者様も当院で治療できる場合があります。

7術中の治療効果判定が可能

個別化した手術(術中LSFG技術)を行っています。
当院では、個々の患者様で切除の設定を変えております。
これまで手術の効果判定に電気刺激試験とLSFG技術を行ってきました。
刺激試験とLSFGの結果には術後の代償性発汗の発現に一定の関係が見出せます。
これにより、手のひらの発汗停止効果を大きく引き出せると同時に代償性発汗の予測と治療が可能となっております。(代償性発汗の取り組みを参照)

充実した装備により治療効果判定が術中に可能です。
術中に効果判定を行うことにより、治療成績が向上しました。
多汗症を引き起こす原因の交感神経幹を切断できず、不適切な神経の切除が行われた場合、手の汗は減少しません。手術をうけたにも関わらず手の汗が止まっていないのはとても残念なことです。
このため、術中に効果判定を行うことは多汗症治療を確実に行う上で非常に重要です。

8初回片側手術

当院では、代償性発汗に配慮し両側の手術はせず、まず片側の手術を行っています。
当院の切除設定では、右のETSを受けると、受けた側の右手のひらの汗と、前腕・上腕の汗はぴったり止まります。
左の手のひらの発汗がすごく多くても、右手の手や腕で拭くことができるようになります。
ハンカチやタオルなどを持たなくても大丈夫になります。
握手も通常右手で行いますから、日常生活の多くの場面で多汗症の問題はなくなります。
多汗症治療では、片側のETSののち6ヶ月くらい経過すると反対側の手の発汗も減少してくることが、約2割の患者にみられることが明らかになっております。
このように、術後1年経過観察を行えば、反対側の手術を受けなくても治まってしまうので、反対側の手術そのものが不要となる場合が約2割あります。

一方、患者様の要求は「両側同時に手術し、早く治療を完了したい」ということがあります。
しかし、両側同時での手術では代償性発汗の程度が強く現れ、その副作用の可能性が著しく高くなります。
同じ交感神経の遮断レベルで手術を行う場合でも、両側同時手術と初回片側を行ってから反対側まで6月以上期間をあける二期的手術を比較すると、代償性発汗の重症度に明確な差異があります。
代償性発汗に悩む患者様の多くが初回両側同時手術の患者様です。

当院では、1996年にこの手術が保険で承認されて後、原則的に初回片側手術の方針で診療してまいりました。
片側治療で代償性発汗の部位と程度を観察することにより、反対側の手術で代償性発汗を引き起こす神経節の切除を控えるなど、代償性発汗の予防の対策を講じることが出来ます。
本邦の一部の施設では、両側T4のみあるいはT5のみの切除を推奨する施設がありますが、重度の代償性発汗の可能性があります。この切除は、発汗停止効果の満足度が少なく推奨できません。

片側治療の良い点

  • (1) 片側手術をうけることによって代償性発汗の程度は軽減できます。
  • (2) 片側でも約20%の患者さまで両側の多汗症の改善が得られます。
  • (3) 反対側の手術に進むときに代償性発汗を引き起こす原因となった交感神経節を特定できます。(代償性発汗の治療に結びつけることが出来る)

両側同時の手術において重度の代償性発汗になった場合には、どの部分の交感神経の切除が原因であったのかが判断できなくなって、代償性発汗の治療が困難となります。

二回目に対側のETSを受ける場合は、夏場を含んで6か月以上の間隔をあけることを推奨しています。