多汗症は、手のひらや顔・頭部・脇・足のうらの限局した部位に多量の発汗がみられる疾患です。全身にたくさんの汗をかく「汗かき体質」とは異なります。
多汗症の用語も誤って報道されたりすることが多く、混乱されて用いられてます。緊張・不安などのストレスから、一時的に交感神経が狂って多汗症になることはありません。
特に、誤解があるのは多汗症は「身体異常の疾患」であり、「精神異常」が原因ではありません。他のホームページの記述のように「悲しい時に涙が分泌されることと同じ」ではありません。標準的な発汗とは異なり、病的な発汗が多汗症であり、「汗の失禁」と表現できます。
等、体の明確な機能の失調として多汗症は位置づけられます。少し汗が多いというだけで多汗症ではありません。
気持ちの持ち方や生活環境などは関係ありません。
幼少期から多汗により学業・日常生活に不具合をきたすため、局所多汗症として平成8年4月から健康保険の治療ができるようになっております。
特に手のひらの多汗症は有病率が1%と多いにもかかわらず、多汗症という病気があまり知られていないため放置されたままの患者が多くいます。
本人が病気と認識していなかったり、家族・友人に理解されず困っている人が多くいるのが実際です。
特徴1
特徴2
特徴3
手のひら多汗症はピーク時における発汗の程度で重症度分類されています。
グレード1 | 手のひらが濡れるぐらいに発汗するが拳を握っても汗が滴下しない |
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グレード2 | 拳を握ると汗が滴下する状態 |
グレード3 | 手のひらを開いていても汗が滴下する |
グレード3の手のひらの発汗の様子
具体的な症状として、学校では答案用紙が汗で破れ、鉛筆書きができなくなることから学業に支障がでます。体育では鉄棒・球技が難しくなります。フォークダンスなど他人と接触する行為は嫌いになります。
日常生活においても握手やパソコンのキーボードの扱い・紙幣やレシートの受け渡しなどで不便が伴います。このため、たえずハンカチやタオルなどを持たなくてはなりません。
手のひらの汗や顔面・頭部・脇の下・足の裏からの汗は、自律神経の一つである交感神経の活動によって誘導されます。発汗の中心的な役割をはたす交感神経節の機能も解明されてきました。
手のひらの局所多汗症は、頚部から第六肋骨までの胸部交感神経節の働きが通常より強いため手のひらの発汗が多くなっていると考えられています。従って、交感神経節の活動を抑える作用を加えると、その領域の発汗が減弱します。このため、多汗症治療において交感神経節に直接アプローチし、発汗にかかわる交感神経節の働きを抑える処置を行なうのがETSです。
手のひら・わきの下・顔・頭部の多汗症の手術治療は
胸腔鏡下胸部交感神経節切除術Endoscopic thoracic sympathectomy (ETS)
として1996年4月から保険適応になっております。
ETSは、手のひらの多汗症には確実な効果があり、特効的ともいえる治療法です。
外用薬・イオントフォレーシスに効果が見られない重症例でも、十分な効果が得られます。
手のひらの汗・顔面・頭部・脇の下・足の裏からの汗は、自律神経の一つである交感神経の活動によって誘導されます。
発汗の中心的な役割をはたす交感神経節の機能も解明されてきており、顔面・頭部の汗は頚部から第三肋骨までの交感神経節が関係しており、手のひらでは頚部から第六肋骨まで、脇の下では第三から第八肋骨まで、足の裏では腰部交感神経節と、それぞれ関連する神経節の領域が異なっています。
手のひらの局所多汗症は、頚部から第六肋骨までの胸部交感神経節の働きが通常より強いため、手のひらの発汗が多くなっていると考えられています。従って、交感神経節の活動を抑える作用を加えると、その領域の発汗が減弱します。
このため、多汗症治療において交感神経節に直接アプローチし、発汗にかかわる交感神経節の働きを抑える処置を行なうのがETSです。
一方、交感神経節は発汗だけの役割を果たしているのではなく、他の機能もあるため、ETSでは正確かつ繊細な手術操作が要求されることになります。
当院では一例も発生していませんが、切除部位が不適切な場合には、瞼が垂れ下がるホルネル症候群と呼ばれる副作用がでる可能性があります。現在では、映像技術がハイテク化し小型高性能な内視鏡が開発された結果、細くて小さな交感神経節であっても拡大して見ることができるようになり、手術の精度・確実度は格段に向上しました。
ETSでは手術後に顔面・頭部手のひら・脇の下の発汗は止まる一方、それ以外の発汗は増加する反射性発汗(別名:代償性発汗)とよばれる状態があります。
反射性発汗も程度が強い場合には日常生活で負担となりETSの問題点とされてきました。歴史的には、ETSは北欧において開発され、当初は全身の発汗能力の高くない白人に適応されたため、反射性発汗はあまり問題となりませんでした。
しかし、ETSが1990年代より世界中で行われるようになり、有色人種における反射性発汗がクローズアップされるようになりました。